コミュニティホテルの事業計画
ホテルの利益はレストランで決まる
ホテルでは、レストランの運営次第で利益が大きく変わります。
料理の価格はホテルの所在地に合わせたものにします。
東京銀座の一等地にあるレストランであれば、
3,000円のランチもありますが、
地方都市では1,000円以下にしないと
お客様は来ません。
コミュニティホテルでは通常レストランが一つですので、
和洋中を揃えなければなりません。
調理人はすべてを調理できるように勉強する必要があります。
コース料理には、松竹梅を用意し、
「竹」に最も売りたいメニューを設定します。
夜の利用はあまり期待できないため、
ランチが主体になります。
土日祝日のブランチ需要や
女子会などの利用もねらいます。
ケーキバイキングが人気です。
重要なことは
レシピごとに材料の使用量と価格を
きちんと管理することです。
盛り付け写真を用意し、
食材の使用量を常に適切にすることが、
レストランの原価を引き下げます。
料理の原価計算はメニューごとに行う
料理の原価計算はメニューごとに行います。
レシピを元に、食材の量と価格から金額を積み上げます。
食材の価格が変わるときは、
仕入会社との価格折衝となります。
食材の仕入会社との価格折衝の最終責任者は総支配人です。
調理人に任せっきりにしてはいけません。
仕入会社は貴重な地域の情報源です。
仕入会社との情報交換は常に密にします。
飲食部門の棚卸は調理人が月1回実施する
食材が予定通りに使われているかどうかを
チェックするためには棚卸が欠かせません。
調理人が毎月1回行います。
忙しい調理人が棚卸を行うためには
効率的に短時間で棚卸ができる仕組みが必要です。
冷蔵庫や倉庫は普段から整理、整頓し、
食材ごとに置き場所を決め、
ラベルをつけておきます。
「封を開けていないものだけ棚卸対象とする」
というようなルールを決めておきます。
宴会は企画が命
ホテルの周辺環境で宴会の種類は異なります。
周辺が企業の場合
企業が多ければ、歓送迎会、忘新年会などになります。
企業主催の予算達成祝賀パーティーなどもあります。
周辺企業の総務部などを訪問して、需要を聞きだしましょう。
企業相手の場合、後払いとなることもあります。
宴会を受けるときは、
申込書で入金時期をきちんと確定します。
受注で仕事は終わりではありません。
入金を確認して仕事は完結です。
周辺が住宅の場合
周辺が住宅地であれば
誕生会、七五三、入学祝、結納などがあります。
法事はお寺とタイアップできます。
家族が集まる宴会には、子供もいます
子供のためにベビーベッド、チャイルド席を用意します。
クラス会、同窓会、消防団の集まりなどもあります。
結婚式はプロデュース会社とタイアップができますが、
初期投資が大きくなります。
実施するかどうかは、ホテルの体力に合わせた検討が必要です。
会議は価格設定に注意
企業向けの会議プランは
価格設定に注意が必要です。
場所貸しで変動原価はかからないと考えてしまいがちですが、
会議室の設営や飲み物の配膳には人件費がかかります。
ホテルでは会議室の設営や配膳を別途有料とするのは難しいので、
それを含めた価格設定が必要です。
宿泊の要諦は(客室単価)×(稼働率)
宿泊部門はほとんどが固定費です。
利益を増やすためには、
(客室単価)×(稼働率)
を最大にすることです。
客室単価を下げれば稼働率は上がります。
客室単価を上げれば稼働率は下がります。
客層により繁忙日は違います。
ビジネス客であれば月曜から木曜日、
観光客であれば休前日です。
時期に合わせた最適な客室単価の設定が重要です。
清掃は外注先を相見積で決める
ホテルの清掃はパートにやらせるという考えもあります。
パートの方が安くなり、
ロイヤルティも高くなりそうです。
しかし、管理者が必要です。
採用の問題もあります。
最近は人が集まりにくくなっています。
急病などで休みを取られることもあります。
それらを考えると、本当に安いでしょうか?
ただし、ホテルの清掃はオフィスとは違います。
髪の毛一本落ちていてもクレームになります。
初めて頼む清掃会社は、
それまでの実績を確認し、
初回の清掃結果のチェックを
入念に行わなければなりません。
宿泊部門の原価削減は、清掃、アメニティ、リネンから
宿泊部門の変動原価は清掃費とアメニティ代とリネン代です。
アメニティは単価が安いからと無視してはいけません。
ちりも積もれば山となります。
清掃費やリネン代と合わせて、
相見積で原価削減を図ります。
代理店手数料は宿泊部門の経費
楽天やじゃらんに支払う代理店手数料は
宿泊部門の経費です。
経費であることを忘れてはいけません。
人件費は上昇する
従業員が経験を積めばスキルが上がります。
それに合わせて給料も上げなければ、
不満の原因となります。
人が変わらなければ、
人件費は上がると考えなければなりません。
コミュニティホテルの年間計画
年間計画は毎年変える
年間予算は、毎年売上が増加するように組むはずです。
親会社から、増加した売上予算を示達されます。
増加した売上予算に対し、
今年と同じことをしていたのでは、
売上増加は見込めません。
売上を増やすための施策を取らなければなりません。
新たなイベントを実施するのか?
プロモーション活動を見直すのか?
具体的なアクションプランを作成し、
年次予算は、イベント、プロモーション活動と関連付け、
部門別に作成します。
月次収支管理はスピードが命
仕入先からの請求書は、月末締めで
3~4営業日で請求してもらうようにします。
5営業日目には前月の実績を確認します。
請求が遅い公共料金は推定値でかまいません。
総支配人とレストラン、宿泊、宴会、調理、営業の各部門長が
前月実績の情報を共有します。
前年実績と予算と今年の実績から、
定量的、定性的な分析をします。
総支配人が主催する定例会議において、
予算達成、未達の原因分析を行い、
打つべき施策を決定します。
これが、総支配人の最も重要な仕事です。
時間を有効に使うためには、
報告は会議でしないことです。
各部門の報告は事前に配布し
それを読んだ上で会議を開催し議論します。
企画は4ヶ月前から詳細を決定する
企画は年間計画に基づき4ヶ月前に詳細を決定します。
4月の企画は12月に詳細を検討し月末までに決定します。
企画はイベント終了後の反省会で振り返り、
次回に向けての改善点を洗い出します。
4ヶ月前から部門内で現場の人を含めて検討し、
部門長が取りまとめます。
部門長が取りまとめた企画案を
総支配人を含めた関係者が検討し、
具体的な施策に落とし込みます。
料理のメニューとレシピ、
アプローチするお客様と方法、
パンフレットの写真やキャッチコピーなど、
詳細を決定していきます。
準備の状況は毎月報告を受け、
定例会議でフィードバックします。
修繕は計画的に行う
建物の修繕は必ず発生します。
事業計画に必ず盛り込みます。
内装は5年毎に新しくして、
ボイラー、空調、エレベーターなどの設備は、
減価償却と連動して新調します。
コミュニティホテルの人材育成
コミュニティホテルの人材育成は地元との懸け橋
コミュニティホテルでは
従業員を運営に参加させることが重要です。
地元採用が多くなるので、
地元の意見を吸い上げることができます。
従業員は道具ではありません。
従業員が常にお客様のためになることを考え、
行動できる仕組み作りが必要です。
従業員が自信をもって、
家族や友達を招待できるホテルでなければなりません。
従業員の育成や評価は部門長にまかせっきりではいけません。
部門長の感じ方、考え方は人それぞれです。
総支配人は、ホテルの従業員やビジネスパートナー一人ひとりと
常にコミュニケーションを取ることを忘れてはなりません。
ホテルサービスの多能工化
ひとりの人がいくつもの仕事ができると
人の融通がつきやすくなります。
急病のときや繁忙時に助かります。
しかし、優秀な人ほど忙しくなります。
そうすると優秀な人に不満がたまります。
多能工となった優秀な人材には
給与などで報いる仕組みが必要です。
コミュニティホテル経営の注意点
ホテルの3S
厨房やパントリー、倉庫など、
お客様の目につかない場所ほど
整理・整頓・清掃の3Sが重要です。
従業員が便利に使えなければなりません。
お客様の目につく場所には
お客様に必要のないものがあってはいけません。
階段の裏に備品や消耗品があったりしてはいけません。
故障中のものなどあってはなりません。
業者会は諸刃の剣
業者会を結成するとホテルの運営が楽になるかもしれません。
しかし、業者会は諸刃の剣です。
排他的な団体となり、原価削減の足かせとなる場合があります。
非効率な会社があっても、取引を止められなくなるかもしれません。
業者会にディナーショーなどのプレッシャー販売をかけても
ブーメランとなって、ホテルに戻ってくる可能性があります。
送迎車
ホテルの立地が悪いときは
送迎車を用意します。
宿泊客だけでなく、
夜のレストラン客も
最寄り駅まで送ると喜ばれます。